前歯が欠損したところへの義歯の装着や歯の移動は、イタリア中央部に位置したエトルリアにおいて紀元前8世紀まで遡ることができる。
歯列の不正の問題についてはすでにギリシャ時代の医聖ヒポクラテスが指摘している。
歯科矯正学の原語のOrthodontics は、ギリシャ語の ortho-(正しい、まっすぐな)、-odon (歯)、ikos (ics =科学)に由来している。
歯科矯正学がギリシャ語に起源し、萌出中の歯を指圧で動かすというローマ時代のCelsusの記述から、人類は紀元前から正常な歯並びの重要性を認識していたことがわかる。
口腔内に矯正装置を装着するのは、歯科医学の父とよばれるフランスのFauchard (1728) が歯列の唇側にアーチ状の金属板を置き小孔と歯を紐で結び歯を移動させた18世紀まで時代が大きく下る。
19世紀になると、上下顎歯列の関係に着目して歯の位置異常を改善しようとする装置が考案された。
Kingsleyは1877年に咬合跳躍法を発表し、咬合斜面板を考案した。
この時期に機能的メカニカルストレスに骨梁構造が適応するという法則や機能的に関する仮説が発表された。
この理念はノルウェーで Andresen とNauplによって機能的顎矯正(Funktionskieferorthopadie) に応用され、FKOが開発された。
Herbst (1910)は固定式の機能的顎矯正装置を考案した。
さらにMoss(1964)によって頭蓋顔面の器官の発生、成長、維持は機能的反応であり、二次的かつ代償的であるとする機能マトリックス説が唱えられた。
Petrovic (1972)は、下顎の機能的な前進誘導や後方率引によって下顎頭軟骨の細胞増殖活性が変化することを明らかにした。
形態は機能に従うという治療理念は、大西洋によって隔てられたヨーロッパとアメリカとの間で当時の経済的な格差を背景に、口腔周囲筋の機能力を利用し安価に作製できる可撤式矯正装置と高価な金属でできており金属線などの機械的弾性によって歯を移動させる固定式矯正装置とに分かれて発展した。
ヨーロッパでは特にドイツにおける機能的顎矯正装置、アメリカでは Angle が歯根を三次元的に移動させるための固定式矯正装置を次々と開発し、エッジワイズ装置の考案に至った。
その後1970年にAndrewsがストレートワイヤー法を発表して以来、さまざまなプリアジャステッド装置が製品化され、現在では結紮を必要としないセルフライゲーションブラケットが普及している。
20世紀に入ると、歯の移動に伴う組織学的変化についての動物実験による科学的検証が盛んに行われ、最適な矯正力や歯の移動のメカニズムが解明されていった。
診断学においてはAngleの不正咬合の分類(1899)が定義され、頭部エックス線規格写真分析法(Dowing、1948)が確立された。
現在では、CTやMRIによる画像分析技術が著しい発展を遂げ、顎顔面を三次元的に詳細に解析できるようになった。
医用材料の開発の面からみると、1970年代にはダイレクトボンディング法(三浦不二夫、1970)が一般化、1980年代に超弾性のニッケルチタンワイヤーが出現、最近では歯科矯正用アンカースクリューが応用され、次々と新技術が生まれている。
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